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息子の部屋 Comments (5)
愛する者の死。
家族はそれぞれに傷つき、心の舵が取れず、互いにぶつかり合う。
なぜ、神は彼を選んだのか?
考えても考えても、ヒントすらない難問。
私がもしこうしていたら、あの人は死なずにすんだ・・・
唯一自分で導き出せる答えだった。
自分が死んで、こんなに打ちひしがれ、惜しんでくれる人がいる。
それこそ、死んだ人への鎮魂のメッセージなのだ。
だから、失った人の悲しみは無駄ではない。
愛在るが故の、耐え難い苦しみなのだから。
個人的には
もう一騒動、欲しかったです。
息子の部屋には、秘密があったとか。
ストーリーが引き締まる何かが・・・
心を掴んで離さない、とまでは行きませんでした。
☆良かったところ☆
・いびつな展開
映画の基本をやっているようで、ラストへ向けてのグロテスクなまでの非ドラマ感は面白い。とらえどころのない恋人が現れ、感動の準備が整ったところを肩透かしして、それどころか虚しさの穴がぽっかり胸に開く。
お涙頂戴の前提ストーリーから、解決ポイントへの道筋の整っていない具合、シーン同士がガタピシいっている感じ、ハンドリングできていない進行が、実にリアルで本作の宝石となっている。
・精神科医という設定
この設定自体、あまりによくでき過ぎている気もするが、分析医が冷静を保てるか否かのギリギリのラインを見せてくれるのは、スリリングでもあり、力む、他にないリアリティがあり、面白かった。
ただ、もっと耐えるのも観たかった。(私事にうろたえ、分析医として、もはやアウトなのは、物語のわかりやすさ追求し過ぎていて、面白さが欠けたような気がする)
・音楽
常に同じ曲が流れるのはよかった。
家族という一見幸せそうに見える集団に通底している哀しさを、空気に刻んでいるようだ。
・シーン開けの演出技法
北野武的手法が効果的になされている。
シーンののっけから、北野監督曰く「因数分解」の画を使い、行動の結果が示されている。それが、映画にリズム、小説でいう文体のようなものを生んでいる。
★悪かったところ★
・息子がすでに死ぬとわかって観る陳腐さ
息子の死が予告編で明かされていて、それをコミで観なければならない。よって、悲劇としてあまりに安易な定型へとはまりやすいし、じっさい、遺された者らの多くのリアクションは、その型にはまってしまっている。お涙頂戴に、どうしても流されてしまう。
・精神科医という設定
冷静で平和を好み寛容で理性的人物としての主人公の設定、その性質を、さらに拡張させているのが、この職業設定。うーん。少し設定が説明的過ぎやしないか?
前述したが、この設定は、父の理性崩壊描写を生かすためになされているようだが、理性の崩壊をやはり最後の最後まで隠し通したほうが、より奥ゆかしい感動があったように思う。伝家の宝刀を、ちょっと抜きすぎ。
よって、古めかしい悲劇でも観ているような、たとえば、歌舞伎で子が殺された父のような、そんな芸能臭さがぷんと漂ってしまったか。
わたしたちは、人生で理不尽な不幸な目に遭ってしまったとき、そのやり場のない気持ちをどこに持っていけばいいだろうか? 前向きに考えられない自分の気持ちを、どう整理したらいいだろうか? 理屈も分析も救ってくれない。
この映画は、それを解決してくれるわけではないけれど、そっと寄り添ってくれる。肌の温もりを感じさせてくれる。イタリア映画ならではという感じもする。
このような映画があるだけで、誰かの気持ちが少しだけ救われることがあるのかもしれない。
出会えてよかったお気に入りの映画のひとつ。
音楽も美しく暖かみがある。
(最優秀作品賞)を受賞した作品です。
精神分析医ジョバンニはある日事故で息子を失います。
「あの時、こうしていれば。」
「あの日をもう一度やり直せたら。」
残された家族は、悲しみから立ち直れずにいました。
そんな時、死んだ息子と付き合っていたらしい少女から手紙が届きます。
息子の死と真正面から向き合って、
それを乗り越えるまでの家族の姿を描いた感動的な映画です。
全体的に淡々としているんですが、それが逆に活きていると思います。
ジワジワと感動する作品です。