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ポーラX Comments (4)
見終わった直後の感想は、これがフランス映画だなって感じだった。丁寧な情景描写や半透明な諸人物の感情が随所に見られた。一方では、最初の空爆・活動家のacid演奏・血の河など衝撃的なシーンもあった。
「真実」と「偽」について
この作品には偽あるいは嘘はいくつも見られる。母マリーが隠した姉イザベラの存在・ピエールが書いた「光の中で」・フランスという国に隠された闇(人種問題など)。それに対し真実と呼べるものはなにひとつ無いように思われた。
ピエールについて
ピエールは身がボロボロになりながらも、自らの作品作りを通して真実を追究していこうとしていたようにみえるが、本当にそうだったのだろうか?
第一にピエールは、イザベルが姉であるか否かを敢えて追求しようとせず、一人の女性として愛した。第二にピエールは、イザベルとの関係を壊したくないがために、リューシーの正体を偽った。
この背反な行動の中に編集者の言うとおりピエールの「未熟」さが有り、本人もそれに気づきながら苦悩したと思われる。
最初の爆撃音とバンドのジャギジャギざがざが音が好き爆音でみたい
以前より「この世を超越する」と渇望していたピエールはリュシーも母も捨て家を飛び出し、イザベルと暮らすようになった。二人が結ばれてしまってから超越した人間への興味は失せてしまったけど、母のバイク事故死、リュシーの病気、そしてリュシーが自ら二人と一緒に住むことになったことで急展開する。アパートに住むインド人の少女が死んだエピソードの衝撃はすでになくなっていた・・・ううむ。
妄想と混沌だけの小説家。文学的なんだろうけど、そうした小説家の辿る末路は知れたもの。ただただ暗い雰囲気で進むストーリーで、イザベルも遊覧船から飛び込み自殺未遂してしまう。そして従兄弟であるティボーの存在。追いつめられるほどの確執があったと思えないが、ピエールに銃殺を決意させてしまった。小説家としての悩みのほうが重要な位置を占めているんだろうけど、このあたりはよくわからない・・・
ギョーム・ドパルデューは1996年にバイク事故。2003年には右足を切断しているという。そして2008年10月に急逝。本作でもバイクで転倒しているシーンがあるし、ドヌーヴのバイク事故死のシーンもひどく象徴的。
寡作のカラックス監督が8年ぶりに手掛けた本作。テーマは「未成熟」だそうだが、正確には「未成熟者は真実にたどり着けない」であろうか。外交官の息子であるピエールは、美しき母と「城」に住み、天使のような婚約者もいて幸福な生活を送っている。そこに突如現れる「影」。母違いの姉を名のる黒髪のイザベルの登場で、ピエールはそれまでの裕福な生活を捨て、イザベルと生きることを決意する。それまでの明るい陽光の爽やかな映像から一転、画面は暗雲垂れ込める暗い映像に変わる。薄暗い部屋での衝撃のSEXシーンはリアルでありながら神秘的で、近親相姦を淫靡としてではなく、むしろ神話めかした美しいラブシーンだった。しかし「未熟さ」が魅力といわれている主人公が、愛も自分が書く小説も「真実」を求めて、不幸へ突き進む姿が痛々しかった。神々に愛されそうに美しいピエールが、イザベルと暮らし始めてから、目は落ち窪み、見た目も精神もボロボロになっていくのが観ていてとても辛い。そうまでして追い求めた真実が「模倣」とは・・・!カラックス作品の特徴である疾走感が作品全体を不穏たらしめ、息苦しいほどだ。真実を追い求めた青年が最後に手に入れたものは何だろう?母、友人、裕福な生活、未来、愛、そして姉・・・、失ったものは計り知れない。目の前の「真実」は彼にとって単なる「目くらまし」にしかすぎず、その虚構を信じて突き進む未成熟さ。独りよがりに「真実」を主張するイザベルもまた、真実の呪縛にがんじがらめになり、ピエールともども絶望の淵へ墜ちてゆく。真実は人から優しさを奪う。時には愛する人のため、優しい嘘も狡猾な嘘も必要だ。それが人生の「事実」。「真実」とは違う「事実」を知って、人は徐々に大人になって行く(成熟して行く)。青いまま堕ちてしまったピエールを、婚約者であるリュシーだけがただ待ち続けるだろう、時と共にゆっくり熟しながら・・・。