どん底(1936) Plot

印象派の巨匠ピエール=オーギュスト・ルノワールの息子としても知られるフランスの名匠ジャン・ルノワールが、ロシア文学を代表するマクシム・ゴーリキーの名作戯曲を映画化。人生のどん底から抜け出していく男と、どん底へと落ちていく男の友情を、安宿に暮らす人々の群像のなかで描いた人間ドラマ。間仕切りもない粗末な木賃宿を根城にしている泥棒のペーペルは、貪欲な家主コスティリョフの若い妻ワシリーサと恋仲にあったが、ワシリーサの妹ナターシャがひそかにペーペルを慕っていた。ある時、ギャンブル依存症で破産寸前の男爵の家に忍び込んだペーペルは、男爵に見つかってしまうが、2人はその場で意気投合し、夜明けまでカードゲームに興じ、飲み明かす。やがて破産してすべてを失った男爵は、ペーペルと同じ木賃宿で暮らし始める。そしてペーペルは、ワシリーサとの関係を清算してナターシャとの新生活を夢見ていたが、そのことに嫉妬したワシリーサは、役所の監督官がナターシャにほれていることを知り一計を案じる。当時存命だったゴーリキーの許諾を得たルノワールが、原作にはない、ギャンブルによって男爵がすべてを失い、安宿に暮らすようになるまでのエピソードを付け加えた。ペーペルを「大いなる幻影」のジャン・ギャバン、男爵をフランス演劇界の名優ルイ・ジューベが演じた。2022年3月より、4Kレストア版で全国順次リバイバル公開。

どん底(1936) Trailer Play Online(2022)

どん底(1936) Actors

どん底(1936) Related

毒親 ドクチンPlay Online
毒親 ドクチン
プロット  韓国
Apr,06 In Theaters
ゴッドランド GODLANDPlay Online
ゴッドランド GODLAND
プロット  デンマーク・アイスランド・フランス・スウェーデン合作
Mar,30 In Theaters
美と殺戮のすべてPlay Online
美と殺戮のすべて
プロット  アメリカ
Mar,29 In Theaters
ナチ刑法175条Play Online
ナチ刑法175条
プロット  アメリカ
Mar,23 In Theaters
ブリンダーヴァナム 恋の輪舞Play Online
ブリンダーヴァナム 恋の輪舞
プロット  インド
Mar,15 In Theaters
ザ・タワーPlay Online
ザ・タワー
プロット  フランス
Apr,12 In Theaters
システム・クラッシャーPlay Online
システム・クラッシャー
プロット  ドイツ
Apr,27 In Theaters
MONTEREY POP モンタレー・ポップPlay Online
MONTEREY POP モンタレー・ポップ
プロット  アメリカ
Mar,15 In Theaters
マリウポリの20日間Play Online
マリウポリの20日間
プロット  ウクライナ・アメリカ合作
Apr,26 In Theaters
アイアンクローPlay Online
アイアンクロー
プロット  アメリカ
Apr,05 In Theaters
METライブビューイング2023-24 ビゼー《カルメン》Play Online
METライブビューイング2023-24 ビゼー《カルメン》
プロット  アメリカ
Mar,08 In Theaters
ダブル・ライフPlay Online
ダブル・ライフ
プロット  日本・中国合作
Apr,19 In Theaters

どん底(1936) Comments (1)

Mgxihssopnk
Mgxihssopnk
ネタバレ! クリックして本文を読む
ジャン・ルノワールの非常に豊かな精神性に守られたシリアスドラマである。ゴーリキーの原作未読の為断言できないが、ここに描かれたルノワールの世界より遥かに悲惨な社会背景ではないだろうか。しかし、今この映画を観るにあたって、そのことは余り問題ではない。それは、ルノワールの「どん底」がゴーリーキーの骨組みのみを利用したに過ぎなく、ゴーリキーのテーマとルノワールが描きたかったことは違うと思われるからである。
何故それが言えるかと云えば、貧民たちの打ちひしがれた生活描写を観ていても、社会に対する不満や批判といったプロレタリア文学の特徴が感じられないからだ。あらゆる状況下において、人間は精神に余裕を持ち生きるべきで、人生はその意味で幸せに過ごせるものなのだという思想が、全編を覆う。木賃宿に住む種々雑多な男たちの言動を観ても、飢えた生活に絶望した様子は窺えない。これには驚きを持った。例えばチャップリンが喜劇の要素として貧しい人々を題材にするのとは違って、ルノワールはリアリズムで表現しながら厳しい境遇と人間を対比させている。これがとてもユニークであり、ジャン・ルノワール独自の世界観と云えるだろう。

この映画で一際異彩を放つ人物は、文句なくルイ・ジューヴェが演じた男爵である。賭博にハマり全財産を失い、屋敷を出て泥棒のペペルのいる木賃宿に住む男爵は、身を滅ぼす人間の典型的な例である。それがルイ・ジューヴェによって、何と魅力的に毅然と演じられていることか。この名優の演技には感服しかない。それと、ジャン・ギャバンのペペルと男爵の友情が美しい。フランス映画の特徴の一つに、他の国と比較して男の友情を扱う題材の多さとその描写の繊細さがある。この二人の友情も、フランス映画の中で特筆すべきものであろう。それから、ルイ・ジューヴェの男爵が何故身の破滅を自ら導いたかが、単に賭博に目が眩んだ結果だけではないことが分かる。ここにルノワールの意図がある。物語は、ペペルが木賃宿で働くナターシャと結ばれ、新しい人生を求めて旅に出る。チャップリンとクレールを思い起こすラスト・シーンで結んでいた。作劇としては、ペペルが悪徳の主人ユスティレフを殺害するも、程なく釈放されて悲劇には転化していない。全ては、ルノワールの救済の愛の豊かさで登場人物は生きて行く、生命感溢れる「どん底」であった。ただ一人、役者の夢が破れた男だけが自殺するエピソードは、ルノワールの自省的皮肉と見えなくもない。

1980年 2月28日  フィルムセンター